ずいぶん遠くまで歩いてきたのね
何も見知った景色がないわ
日曜日にはきまってあなたと出かけた教会も
初めて唇を重ねた野原も
いつも二人で眺めていた低い山も
ここからは何も見えないの
かわりに
若者たちの出かけるクラブがあって
煌びやかなお店もあって
高いビルが立ち並んでいるわ
私はずっとずっと歩いてきたの
あなたを失ったつらさから逃れるために
あなたとの思い出のない場所まで
そうしてここまできたけれど
ずいぶん歩いたと思ったわ
ずいぶん遠くまで来たの
でもやっぱり目を閉じるとそこには
あなたがいて
大好きなマリア様の像の前で二人お祈りしていたことが
思い出されてしまうのよ
あなた以外のひとと唇を重ねるなんてこと絶対にできない
私にはあなたしかいなかったのかもしれなくて
あなたが最期まであたしを抱いて好きだとつぶやいていたから
あたしも最期まであなたを思って好きだとつぶやきつづけるべきなの?
ずいぶん遠くまで歩いてきたわ
でもやっぱりあなたは後ろを追ってくるのね
私はいつまでたっても一人になれない
ずいぶん遠くまで歩いてきたのに

詩のページトップに戻ります。

TOPに戻ります。